今回は「GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略」を紹介します。
以前「【書評】the four GAFA 四騎士が創り変えた世界|今こそGAFAの本質を知ろう」の記事で紹介した本の続編です。
GAFAとは米国を代表するIT企業である「Google」「Amazon」「Facebook」「Apple」の4つの会社の頭文字を取った造語です。
ほんの数十年前には無名であったこれらの企業は、今となっては私たちの生活に欠かせない存在となっています。
そしてCOVID-19が世界的に大流行しパンデミックになった今の世の中にあって、GAFAはさらに強大な力を得ようとしています。
本書ではGAFAの支配とその仕組み、新たなディスラプトの波、それらが起こることでの私たちの生活への影響を解説してくれています。
- GAFAの支配で起こる未来を知りたい人
- GAFAがなぜこれほど強大な力を持っているのかを知りたい人
- ビッグテックの最新動向を知りたい人
GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略 について
本書は2021年12月に発売されました。
著者はスコット・ギャロウェイさんです。
ニューヨーク大学スターン経営大学院教授、MBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教えています。
前作の『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は15万部のベストセラーになりました。
GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略 から学べること
本記事では本書の中でも重要だと思われる点を3つに絞って紹介します。
その点を理解するだけでも今世の中で起ころうとしている全容をぜひ掴んでいただけたらと思います。
パンデミックがGAFAの支配を加速させる
パンデミックの世の中になり、私たちの生活はオフラインからオンラインへの移行を余儀なくされました。
今後仕事もプライベートもよりリモート化を求められ、加速していくでしょう。
そしてその間に加速するのはリモート化だけではありません。
「数十年分が数週間で起きる」という現象がいろんな業界で起きていると本書ではいいます。
アメリカのeコマース市場であれば、2010年から2019年までは毎年1%程度の成長でしたが、パンデミックがアメリカに広がってから8週間後では、その数字が27%程度まで跳ね上がったとのことです。
10年分以上の成長がこの8週間の間に起こってしまったということですね。
そして株式市場でも同様のことが起きてます。
アップルの時価総額は1兆ドルに至るまで42年かかったが、パンデミックが起きてからわずか20週で2兆ドルを突破しています。
このようにパンデミックは世の中の流れに拍車をかける最強の増強装置であるといえます。
お気づきのとおり、世の流れはオフラインからオンラインであり、持つものと持たざるものの格差は広がる一方です。
GAFAはその最先端をいく企業です。
以前は先行投資で負債を多く抱え、B/Sが歪になっていましたが、今や先行投資も花開き強固なB/Sをも持ち合わせています。
迫り来るディスラプターズ
ディスラプターズとはある業界を大変革させる企業群のことです。
小売り業界はeコマースの覇者であるAmazonに破壊され、大変革を余儀なくされました。
その波は止まることを知らず、他の業界にも起ころうとしています。
本書ではAmazonを含むディスラプターには8つの特徴があるといいます。
- 人間の本能に訴えかける
- キャリアの箔付になる
- 成長とマージンのバランス
- ランドル
- 垂直統合
- ベンジャミン・バトン製品
- ビジョンに満ちたストーリーテリング
- 好感度
どの特徴も気になるものばかりですね。
本記事ではその中でも一番強力な特徴だと思う「ベンジャミン・バトン製品」について紹介します。
ベンジャミン・バトンというと2008年にアメリカで公開された「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」の主人公ですね。
彼は80歳の状態で生まれ、年を取るごとに若返る人生を与えられた男として描かれました。
本書でいう「ベンジャミン・バトン製品」とはその名のとおり年をとるごとにに若返る製品やサービスを指します。
どういうことかというと、時間が経つにつれてユーザーの価値が減るのではなく、増していくということです。
日用品や消耗品、例えばティッシュや洗剤などは使えば使うほど減ってしまいます。
一方でAmazonでの買い物体験はどうでしょうか。
ユーザーが増えたからといって、今のご時世、通信速度が遅くなったりはしないでしょうし、誰かが買う前に買わないと在庫がなくなるということもないでしょう。
それよりもその物を買った感想をシェアし、商品に対してのレビューが増えることで、買い物を通した体験価値は増すでしょう。
ひと昔前ではこのようなビジネスモデルは成り立ちにくかったのかなと思います。
なぜならプロダクトやサービスにユーザー同士のつながりを求める文化はなかったですし、ましてやオンライン上でこれだけ多くの人が利用できる通信環境が発達していなかったからです。
ベンジャミン・バトン製品は現代の高速ネット環境とユーザー同士のつながりへの価値転換が生み出した新たなビジネスモデルということです。
ビッグテックはあらゆるものを搾取している?
本書では独占的な企業は触れるあらゆるものを搾取しているといいます。
まず従業員です。
タクシー配送会社のウーバーは設備の購入とメンテナンスの責任をドライバー・パートナーに負わせ、彼らを従業員の区分に入れないようにあらゆる手を尽くしているとのことです。
従業員にしてしまうと、健康保険への加入や最低賃金の支払いなど負担が多くなるからです。
さらにフランチャイズ・モデルの親会社へ支払うロイヤリティは4〜8%であるのに対し、ウーバーはなんと20%も要求しています。
一見時間の制約や面倒な雇用契約がある一般のタクシー会社と比べて、好きな時にいつでも働けるドライバー・パートナーは魅力的な雇用形態に見えます。
しかし、その手軽さと引き換えにコストの高い雇用形態をいつの間にか結ばれていたというわけです。
次に私たち消費者です。
これは意外と思われる方が多いのではないでしょうか。
たしかに消費者の立場からするとビッグテックは生活をより快適に面白くしてくれる存在のように思いますね。
しかし、ここでも先ほどのウーバーの例と同じで、それは明るい面だけを見ているにすぎません。
本書ではビッグテックが生み出す過剰な豊富さ、刺激の強いコンテンツによって人間本来の満足を司るドーパミンが正常に機能しなくなっていることを示唆しています。
例えば今流行りのTikTokは終わりのないコンテンツといわれています。
高度なアルゴリズムで私たちが欲している動画を私たちなんかよりも早く見つけ出し、自動で再生してくれます。
それも楽しめるコンテンツは何万本とある中から選ばれ、どのコンテンツも無料で楽しめます。
ひと昔前だと映画であれドラマであれ、始まりと終わりの時間は決まっていましたし、労力とお金をかけて映画館に行くなり、近くのレンタルビデオ屋に借りにいくなりしないとコンテンツを入手することすらできなかったはずです。
TikTokに限らず、フェイスブックでもインスタグラムでも終わりはありません。
ネットがつながっている限りエンドレスに続く刺激的なコンテンツです。
ビッグテックは私たちを休ませてくれず、始まりと終わりを知らせるスイッチは一生オフになることはありません。
たしかに私たちの生活は豊かでより快適になりましたが、いつかこれらの暗い面がクローズアップされ、どういう振る舞いをするか選択を迫られる日が来るかも知れません。
GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略 読んだ感想
前作に続きGAFAやそれを取り巻く環境をしっかり勉強できる本でした。
さらに本作ではウーバーやエアビーアンドビーなどの次のディスラプターの代表格とも言える企業も紹介や、GAFAの搾取に対して政府が本格的に動き出すべきだという政策論的な話も盛り込まれており、ほんと濃い内容でした。
今後もスコットギャロウェイさんの本は追っていきたいと思います。
新作期待しております。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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