「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」|マーケティングの真髄を学ぼう

今回は森岡 毅さん著の「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」を紹介します。

著者について

森岡 毅

1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。札幌医大神経精神医学講座に入局。2004年から米国シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学。帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube(30万人)、メールマガジンなど累計60万フォロワーに情報発信をしている。著書37冊、累計発行部数180万部。

樺沢紫苑公式ブログ プロフィールより

本書から学べること

USJは子供のときに一度行ったきりいってませんが、はじめて行ったときはとても楽しかった記憶があります。

ハリウッドの名作が現実に飛び出してきたあの衝撃は忘れられません。

それから数年経ち、開業当初の勢いは失われ業績も低迷していたようです。

中高時代に友達との会話でUSJの話をした記憶が全くありません。

しかし、ハリーポッターのアトラクションの開業などで数年前からメディア露出が増えはじめ、最近では映画の枠にとらわれず、アニメやゲームなどの流行りを取り入れ賑わっている印象があります。

今では業績もしっかり回復しているようで、2022年テーマパーク入園者数では、なんとあの東京ディズニーランドを上回り、国内テーマパークで1番の来場者数(年間1,235万人)となりました。

ゆう
ゆう

本書はそんなUSJを再起させた森岡さんによるノンフィクションのお話です。どのようにUSJを再建したのか、マーケターとしての心構え、企画に対する数字の分解の仕方までソフトからハードまで学べます。

日本人はどうしてリスクを冒さないのか?

「日本人はどうしてリスクを恐れて何も変化を起こさないのだと思いますか?」私は答えました。「その多くは変化を起こす必要性を理解していないからです」そして静かに続けました。「日本人にそうでない人間もいることを、残念ながらあなたはまだ知らないようですね」

19ページ

このやりとりがなければ森岡さんはUSJ再建の第一人者となることはなかったのでしょう。

この回答自体がリスクをとっています。

相手はハリウッドを舞台にビジネスの修羅場をくぐってきた超やり手CEOのグレン氏です。

さて、ここでいう「必要性」を理解していないというのはどういうことでしょうか。

それはリスクを取らないというのは、すなわち衰退の一途ということです。

組織に守られているとリスクを取らないと生き残れないということを忘れてしまいます。

USJのV字回復の裏にはリスクをとる戦略がたくさん散りばめられていました。

「映画だけ」のテーマパークは不必要に狭い!

USJへの転職の検討にあたり森岡氏はUSJについての口コミを徹底的に調べ上げました。

何がUSJの成長を阻害しているのか。

USJについて書かれた評論や意見のほとんどは「映画のテーマパークからブレてしまっている」ということでした。

普通ならここで、「なら映画のテーマパークとして再建を図らなければ」となるでしょう。

しかし、森岡氏は、この批判をUSJの成長に繋げるべく、さらに深く掘り下げて考えました。

私は社内にはびこる最大の敵「間違ったこだわり」に、まず宣戦布告することにしたのです。それはハリウッド映画のテーマパークとしてはじまったユニバーサル・スタジオ・ジャパンのブランドを、長期的に生存可能に再定義すること。つまり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンというブランドを、「映画の専門店」という妄想から、「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」へと脱皮させることでした。

37ページ

これは、逆転の発想ですね。

お客さまのお声を誠実に受け止めるのであれば、そのような戦術はとらないでしょう。

また世間の声に従順であれば、その先の施策が仮に失敗したとしても、誰も責めることはないでしょう。

しかし、森岡氏はあえてリスクをとりにいき、既成概念にメスをいれました。

その行動力こそ、マーケターとしての使命であり、役割であると理解していたのでしょう。

USJは世界最高のブランドを集めた「セレクトショップ」

演劇、アニメ、ゲーム、音楽、スポーツなども、素晴らしいエンターテインメントなのです。それらのジャンル自体は人を感動させるという目的を達成するためのフォーマットに過ぎません。映画は素晴らしい感動をくれますが、素晴らしく感動するのは映画だけではないのです。

42ページ

当時のUSJの社員からすると森岡氏の持ち込んだ新たな思考は天変地異でしょう。

自分たちは人々に「感動」を届けるために、映画の世界を現実世界に再現することにこだわり抜いて仕事をしてきた。

しかし、「感動」をもたらすエンタメは映画だけではない。

「USJ」は映画だけにこだわることはやめました。しかし、映画を今後も軸として展開していきます。「映画だけ」は否定しますが、今後も「映画を軸として」大型アトラクションを展開する考えです。逆に言えば素晴らしい映画のアトラクションを入れていくためにも、その高価な支出をささえるのに、映画以外のエンターテインメントブランドが必要になるということです。

43~44ページ

あくまで他のエンタメは映画という軸を支えるための副次的なブランドとして捉える。

生かすものは生かす。

今まで培ってきたUSJのブランドやノウハウをしっかり踏襲しつつ、新たな収益源を生み出す戦略です。

今日から当社は肉を取り扱う会社ではなく、野菜を取り扱う会社に業態を変更します。

そんな暴挙は従業員はおろか世の中かがついてこれません。

マーケターは、従業員や世の中の考えをしっかりとりいれ、新しい息吹を吹き込ませる仕事ということです。

まとめ

USJ再建という大仕事を舞台にしており、マーケティングの真髄が学べる内容でした。

世のマーケターは数字を分解して示唆はするが、施策の実施については二の足を踏んでいる方も少なくないのではないでしょうか。

リスクを取らないことが一番のリスクである

既成概念を壊して、いいものはそのまま利用しつつも新しい価値を見出し続ける

そんな森岡さんの仕事に対する姿勢はどれも学びになります。

少しでも本書が気になった方は是非読んでいただきたいです。


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