【書評】「MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実」|MMTの入門書としておすすめ

今回は「MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実」を紹介します。

「現代貨幣理論」このテーマずっと気になってました。

現代貨幣理論というと難解なイメージを持ってましたが、読み進めていくと誰でも理解できるような内容で安心しました。

本書では政府と日本銀行の関係性、国債発行の仕組み、国の財政赤字、という基礎的な知識から紐解いて、「なぜ今、現代貨幣理論が必要なのか」をしっかりと説明しています。

MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実 について

本書は2019年10月に発売されました。

著者は京都大学大学院工学研究科教授の藤井 聡さんです。

彼は東京工業大学大学院理工学研究科教授、安倍内閣・内閣官房参与(防災・減災ニューディール政策担当)などを歴任しています。

MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実 で学べること

「日本は借金大国でいつか首がまわらなくなる日が来る」

そう思っている人は多いのではないでしょうか。

たしかに日本の財政は税収よりも支出のほうが多いですし、国債の残高は積み上がっていく一方です。

これでは国が破綻してしまうと思われてもおかしくないですね。

しかし、そのようなことは起こりえないと本書では説明しています。

現代貨幣理論を学ぶことで、そのロジックがわかります。

この記事では本書の中から重要だと思われる点を3つ紹介します。

政府はお金をつくりだせる

日本円はどこで生み出されるのでしょうか。

民間企業が鋳造するための機械を使って生み出しているのでしょうか。

そうであれば、たくさん生み出したもの勝ちになってしまいます。

出回っているお金と物の価値のバランスが崩れてしまい、会計単位としてのお金の機能がすぐに失われてしまいます。

それではどこがお金を生み出しているのでしょうか。

答えは日本銀行です。

日本銀行は必要な時にいつでもお金を生み出せます

では、日本銀行は独立した民間企業でしょうか。それは否です。

政府は日本銀行の株を55%保有しております。

日本銀行は実質上政府の子会社です。

いざとなれば政府の指示で日本銀行は日本円をいくらでも作り出せます。

政府は破綻などしない

それではなぜ、これだけ政府の破綻が騒がれるのでしょうか。

なぜなら誰も政府がお金を生み出せるという事実を信じていないからです。

政府は今の膨れ上がった借金を返す時、国民が心理的な抵抗を持たないように税金や国債発行という形で返すのです。

これは実務上、政府がお金を生み出せることと、なんら変わりはありません。

さらにセーフティーネットとして、日本銀行はマーケットに出回っている国債を売り買いして、価格を安定化させています。

政府は発行する国債の信用リスクを調整し、お金を貸したくないという人をつくらないようにしています。

これらのことから、政府の破綻は事実上ありえないえないと本書では説明しています。

デフレを招いているのはインフレへの恐怖

日本の景気がよくならないのはなぜでしょうか。

それは日本がデフレ環境から抜け出せないことが要因だといいます。

日本以外の国はインフレ国家が多いです。

1995年から2015年の20年間の名目GDP成長率を本書では紹介しています。

それを見ると日本だけがマイナス成長(マイナス20%)で他の国はプラス成長(世界平均でプラス139%)です。

であれば、デフレを脱却しインフレにすればいいわけです。

それでは、なぜ日本円を生み出せる政府はお金をたくさん刷り、経済に刺激を与え、インフレ誘導をしないのでしょうか。

それは「インテリ層」のインフレへの恐怖からきているのだと本書では説明しています。

ここでいう「インテリ層」は過去の失態である「金脈政治の土建バラマキ」や「戦前日本の国債大量発行」などをもち合いに出し、むやみにお金を生み出すような不道徳な手立ては使わない方がいいと考えています。

それらの反省から緊縮に走りすぎてしまった結果、今のインフレから抜け出せない状況を作り出してしまったわけです。

実際インフレ国家でハイパーインフレが起こってしまった国もいくつかあります。

しかし、それらの国は生産能力が十分存在しない新興国であり、日本のような経済が成熟した国ではありません。

これらのことから、本書では政府がお金の供給量を今以上にコントロールすることで、インフレ誘導を働きかけた方がいいと説明しています。

MMTによる令和「新」経済論: 現代貨幣理論の真実 を読んだ感想

本書ではこの記事でまとめた3つのテーマだけでなく、現代貨幣理論を軸に展開すべき具体的な政策まで細かに書かれております。

また貨幣の歴史についても紹介されており、現代貨幣理論を学ぶだけでなく、貨幣とは何かというところまで、全体を俯瞰して学ぶことができます。

少しでも気になった方は是非本書を手に取ってみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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